「Masters of Media」は、IAS Japan が日本の広告業界の有識者に、デジタル広告に関するさまざまな事柄についてお話を伺うインタビューシリーズです。
今回は「IAS AWARD 2022」の代理店部門でブロンズに輝いたPublicis MediaのMedia Director 末政様にお話を伺います。
IAS : 末政様のデジタル広告におけるご経験と現在の職務についてお聞かせください。
2006年にMicrosoftに転職し、デジタル広告との関わりが始まりました。新卒でWOWOWに入社以降、ウォルト・ディズニー・ジャパンでのテレビ局の立ち上げ、日経CNBCでのテレビ広告の営業など、それまで長年テレビ業界におりましたが、デジタルへの潮流を肌で感じ、デジタルの世界に飛び込みました。テレビとデジタルは全く指標が違うので、当初は「インプレッションって何!?」という状態でした(笑)。今でも、テレビ脳とデジタル脳の切り替えは必要です。
現在は、Publicis Mediaで、世界有数の規模を誇るグローバル製薬企業を担当するチームでアカウント・リードをしています。メンバーは東京とシンガポールに分かれており、全体で約30人の規模のチームです。
IAS : Media Director として、一番大変なこと/やりがいのある部分はどういったところでしょうか?
私が担当しているのは、弊社がアドオペレーション(広告運用)をインハウスで始めた最初のクライアントです。それまでは運用をアウトソースしていましたが、2021年2月からビーコンコミュニケーションズとして初めてアドオペレーションを内製化。仕組みも組織も、担当する人材もアドオペレーションの内製化は初めてなので、2021年は本当に怒涛の1年でした。
例えば、日本は多くの日本企業にて3月が会計年度末ですので、デジタル広告の入札も3月に集中しますが、海外では12月がピークシーズンです。また、ソーシャルメディアや検索広告では日本語のバズワードや日本語の検索キーワードなどの設定が非常に重要ですので、その日本の特殊事情を鑑みて、海外のチームとは異なるオペレーションプロセスの構築、そして、日本のクライアントの期待値の高さに我々が提供差し上げるサービスクオリティを合わせることが最初の仕事になりました。毎日のように「今すぐ対処します!」と髪の毛を振り乱していたと思います。(笑)。
グローバル規模の事業において、日本の特殊なマーケット事情はなかなか理解されないので、IASのように日本で直接手厚くサポートしてくれるベンダーは有難いです。IASさんは日本語でのアドベリフィケーションの品質が高く、ローカルのパブリッシャー各社とも強い連携があり、JICDAQにも対応して下さっているので信頼できます。
IAS : 今年のデジタル広告キャンペーンで、重要視されている取り組みはございますか?
担当させて頂いているクライアントは世界有数のトップブランドですので、ブランドセイフティの取り組みも世界トップレベルです。そのため、私どもはグローバル全体で最重要課題と捉えて最優先で取り組んでおります。
当然、良い広告パフォーマンスを生むには費用対効果も必要ですので、このコストと効果のジレンマが、常に苦悩の根源です。更に今年はクライアントと弊社とで、ブランドセイフティの強化に一層取り組むことになりまして、IASの皆様から助言頂きながら次々に施策を講じているところです。
例えば、Programmatic広告配信レポートを見ると、ドメイン・スプーフィング*(ドメイン偽装)で配信されているであろう怪しいサイトが見つかることがあります。広告がブランドを損ねてしまうような闇サイトに掲載されていたり、ページをスクロールしなければ消費者の目に入らないような位置に広告掲載され広告費を課金されていたり、サイト自体に広告のクリックを自動カウントするボットを仕込んで広告費を稼いでいるようなサイト運営者は後を絶ちません。こういう状況を見ると、IASのアドベリフィケーションの重要さを実感します。
IASの仕組みは多岐にわたっているので、まだ使いこなせていない機能もあり、今年はより一層徹底して取り組んでいきたいと思っています。
*ドメイン・スプーフィング : 不正業者が、サイトのドメインを偽装し優良サイトに成りすます行為。質の低い広告在庫を、あたかも高品質な優良サイトのものとして取引するアドフラウドの一種。
IAS : 日本でアドベリの活用がもっと浸透するために、業界として何が必要でしょうか?
代理店側でより高い意識を持って取り組むべきことがあると思います。
CPMやCTRが共通言語になってしまいがちですが、代理店の我々が、本質的な「広告の価値」を積極的に指し示さないといけないと思います。例えば、クライアントから「コスト重視でプラットフォームを選定したい」と言われた時でも、ブランドリフトサーベイを付帯したり、プレミアムな広告在庫を購入できるプラットフォームの価値を伝えて提案していくべきです。
プレミアムインベントリを提供するプラットフォームであれば、質の高いサイトに広告が出るので、サイト誘導の結果も良化することは、我々のこれまでの配信結果でも明らかになっています。IASのソリューションによって得られているブランドセイフティへの貢献について、クライアントにより詳しく理解して頂けるように啓蒙していきたいですね。
IAS : IASに期待されること、リクエストがあればぜひ教えてください。
クライアントへの啓蒙です。
グローバルなディシジョンメーカーとローカルクライアント間の温度差はまだまだあります。例えば、海外ではダイバーシティ&インクルージョンの意識が高いですが、同一民族の割合が全人口の85%以上を占める単一民族国家の日本においては、レイシズムなコンテンツをブロックすることをそこまで意識することは少ないです。そのため、グローバルレベルでのアドベリフィケーションの取り組みをローカライズする際のギャップをどう埋めるかが課題です。
私たちがオペレーション側として「IASのラップ済みタグを納品できないのであれば、そのプラットフォームを使用しない」というガイドラインを引いていますが、その重要性の理解促進をお手伝い頂きたいと思います。
次にIASレポートの数値を毎月報告してはいますが、そもそもアドベリフィケーションが何で、IVT、ビューアビリティとは何で、そのおかげで今までどれだけクオリティの高い効果の高いインプレッションが実現できていたか、どれだけブランドに貢献できているのかという「広告の品質のレポート」を充実させていきたいと考えております。クライアントが「コスト・エフェクティブネス」に高い意識を持ってくださっているタイミングだからこそ、IASのメリットを最大限に生かし、マーケティング支援の成果を最大化させたいです。
IAS : グローバル代理店が故の大変さなどあれば教えてください。
メディアチームでは職場の4割は外国人で、海外のPublicisチームとのやり取りもかなり多く、ほぼ外国で勤務しているような感覚です。世界全体でチームが構成され、ビジネスが進められるダイナミズムがあります。そして、日本企業にありがちな、石橋を叩きすぎること・ 100点を目指そうとすること・失敗を避けようとすることを気にせず、自由にチャレンジできるカルチャーは素晴らしい環境だと思います。しかし、言葉以上にカルチャーが違うので、しんどいこともあります。自由な職場だからこそ、私が日本でのルールでかっちり業務管理していく感覚で指導すると、マイクロマネジメントになってしまうので(笑)。自由には責任が伴うということを痛感します。
IAS : 仕事の緊張や忙しさからリラックスするため、何か行ってらっしゃることはありますか?
映画好きの友人と朝映画を観に行く「朝シネマ会」を結成して、月に2、3回は映画館に足を運んでいます。また、『むらさき連』という地元である経堂の阿波踊りの連に加入していまして、毎年夏はあちこちのお祭りで阿波踊りを踊っております。コロナで中止になっていたお祭りが今年は再開となり、4年ぶりに活動再開となるので、とてもわくわくしています。
末政様、貴重なお話をありがとうございました!
「コスト効率」から広告費が生み出す「効果」にも注力される広告主様を強力に支える末政様チーム。
我々IASは、広告主様が価値ある広告インプレッションで消費者と繋がれるよう、アドベリの計測ソリューションを通じてその安全性と透明性の確保をサポートして参ります。