グローバル比較ができる最新ベンチマーク
Integral Ad Science (IAS) では、世界中で毎日1兆を超えるメディア指標をリアルタイムで計測しています。この膨大なデータにもとづき、デバイスやフォーマット別の詳細なメディア品質のレポートを年に2回発表してきました。最新の「メディア クオリティ レポート(MQR)」は、これまでの国別のフォーマットを見直し、2019年上半期の各国の指標を横並びで比較することのできるグローバル版ベンチマーク速報レポートとしました。
先行する米国では10年以上の歴史を持ち、デジタル広告に必須のものとして定着しているアドベリフィケーションですが、日本では”アドベリフィケーション”という言葉を認知している業界関係者の割合が5割程度にとどまるなど、国によって取り組みの度合いは異なります。商習慣や文化的な背景も数値に影響します。
さまざまな背景を持つ各国のデータを横並びで比較できることで、日本のポジションを改めて確認し、さらなる取り組みが進む一助となることを願っています。
日本だけがビューアビリティが悪化
今回のMQRでは、全世界的にビューアビリティが改善しました。すべてのデバイスとフォーマットで60%を超えたのはMQRの発表開始以来初です。デスクトップ動画で71.9%と過去最高を記録したほか、モバイルアプリ ディスプレイでは9ポイント近く改善し改善率トップとなりました。
世界規模でのビューアビリティ改善には、プログラマティック広告におけるビューアビリティの高い上昇率が大きく貢献しました。また、パブリッシャーダイレクト(純広告)の動画も大きく上昇しました。
そんな中、日本だけがすべてのデバイスとフォーマットで、ビューアビリティの低下を記録しました。前年比ではデスクトップ ディスプレイで約7ポイント、モバイルウェブ ディスプレイで約6ポイントの低下で、デスクトップ ディスプレは対象国9か国の中で最も低い42.3%でした。5割以上の広告が「見られていない」のです。
ブランドリスク半減の裏側で
ビューアビリティが悪化した一方で、日本はブランドリスクがデスクトップ ディスプレイで2.9%、モバイルウェブ ディスプレイで6.5%と、大きな改善を見せました。それぞれ前年比2.6ポイントと6.3ポイントの改善となり、リスク値は約半減しています。広告主の意識の高まりを受け、ブランドリスク対策を重視した対策が進んだ結果と言えます。
しかし、ブランドリスクにばかり注目が集まり、ブランドセーフティ対策のみが推し進められた結果、ビューアビリティが悪化し、アドフラウド/不正インプレッションは対象国中のワーストを記録しています。特にモバイルウェブ ディスプレイのアドフラウドは2位アメリカの0.9%の倍以上、1.9%という高い数値でした。絶対値ではデスクトップ ディスプレイが2.6%と最も高く、これはすべてのデバイスとフォーマット中もっとも高い数値でした。
1つの指標だけに注目することの弊害
いったいなぜこのような事態になったのでしょうか。
ブランドセーフティに着目し、ブランドリスクの高い掲載面を排除したにもかかわらず、メディアバイイング時に用いるCPMやCPAの単価を低く据え置いたことが大きな要因として挙げられます。
ブランドリスクが低く優良な広告掲載面は、品質が高い分、価格も高くなる傾向があります。ところがCAMやCPAを低く抑えたままだと、こういった香品品質な枠は買えません。必然的に、ブランドリスクは低いもののビューアビリティも低かったり、不正インプレッションが多い広告枠へと広告予算が流れることになります。特に配信リスト、除外リストに頼った対策をしている場合はこの傾向がより顕著になります。
この際、3つの指標にまんべんなく目を配っていれば、ビューアビリティやフラウド率が悪化していることに気づき、総合的な効果を鑑みて購入単価を上げるといった対策も可能でしょう。
「ブランドセーフティだけは達成した」の罠に陥らないために
一つの指標だけに着目し、キャンペーン全体の効果を鑑みてCPMやCPAの単価を見直すことができなければ、ブランドリスクだけは低いが、その他のリスクが高くCPMやCPA単価が抑えられている枠しか買えなくなってしいます。
例えば屋外広告なら、ブランドにふさわしい銀座に広告を出せたとしても、相応の対価を支払わなければ人目につかない裏通りの看板しか買えません。高品質な広告環境の値段が高いことは、デジタル以外に置き換えてみると当然のように感じられますが、なぜかデジタルでは見過ごされてしまうことが多いのです。
必要なのは、アドベリフィケーションのすべての指標にまんべんなく目を配ることです。さらに重要なのは、デジタルキャンペーンで何を達成したいのか、その目的に沿ったKPIを設定することです。
アメリカではCPMやCPAの単価だけに着目してデジタル広告のバイイングをするという話は一切聞きません。CPMやCPAは、デジタル広告で達成したい目的に到達するまでの中間指標としては有効かもしれませんが、最終ゴールを測るには不適切だという共通認識があるからです。
日本でも徐々に、CPM、CPA偏重のバイイングから脱却しようと模索する広告主が増えてきています。また、デジタル広告を刈り取り専用メディアとしてのみとらえるのではなく、ブランディングや認知施策として積極的に活用する試みも徐々に広がっています。
IASが提供するデータやソリューションは、こうしたムーブメントにエビデンスと実効性のある対策を提供できるものです。IASのアドベリフィケーションで何ができるのか、ご興味ある方はぜひ一度お問い合わせください。