「Surface」のコンシューマー向けデジタルキャンペーンを統括する日本マイクロソフトの小池浩氏は、デジタル広告のパフォーマンス向上のため、メディアエージェンシーであるカラ・ジャパンとともにIAS のアドベリフィケーションを積極的に活用。直近では、朝日新聞デジタルおよび東洋経済オンラインの広告在庫の中でもビューアビリティの高い広告枠のみを買い付ける「ビューアブルインプレッション広告取引」を実施した。
日本マイクロソフト社内に向けてはアドベリフィケーションの啓発活動も行うという小池氏と、支援するカラ・ジャパンの横田氏・青木氏に、これまでの取り組み状況や、これから期待することについて聞いた。
グローバルの方針に則り、広告配信のクオリティーを重視
— まず、小池さんの担当されている領域やミッションを教えていただけますか?
小池浩氏(以下「小池」):コンシューマー向けPC「Surface」(サーフェス)のデジタルキャンペーンを担当しています。多くの人にSurface を知ってもらい、興味を持ってもらうことを目的として、各種のデジタル広告を展開しています。
日本マイクロソフトに入社して2年になりますが、私はUS本社のグローバルメディアチームに所属しており、広告出稿もグローバルの定めた方針や基準に従って行います。このため、ビューアビリティやブランドセーフティ、アドフラウドに対する考え方も厳格で、その考え方の理解から具体的な施策内容まで、カラ・ジャパンおよびIAS にサポートしていただいています。
横田祐介氏(以下「横田」):電通イージス・ネットワークのCaratがグローバルでMicrosoft のメディア・エージェンシーとなっており、日本では私たちカラ・ジャパン(以下、カラ)が日本マイクロソフトを担当している、という構図です。この体制は2019年で5年目に入ります。
広告キャンペーンの対象となる製品やサービスにはそれぞれゴールとKPI があり、パフォーマンスをより向上させるために、データの活用などさまざまな施策を行っています。その中でも、広告配信のクオリティを高めていかないとパフォーマンスは上がらないという仮説に基づき、全世界でIASのアドベリフィケーションが導入されています。アドフラウドやブランドリスクを排除し、同時に高いビューアビリティで広告がきちんと表示されるクオリティの高いメディアに配信するかが共通の課題となっています。
青木亮氏(以下「青木」):各指標の目標値は、IAS が年に2回発行する「メディアクオリティレポート」のプログラマティック、純広それぞれの平均値を参考に、それよりも高い数値目標を日本から米国本社に打診し、設定しています。
横田:平均値以上というのは出発点で、当然そこから上げていくわけです。IAS とカラ で月例の会議を実施し、一緒に管理画面を見て、キャンペーンごとに現状と改善ポイントについてアドバイスをもらっています。
小池:カラの皆さんには常に「クオリティの高いところに広告を出してください」と依頼しています。ブランドセーフティに抵触するようなところ、グレーなところはなしですよ、と。
「こんなに安心して買える広告商品があるのか」
— 2018年11月に朝日新聞デジタルと東洋経済オンラインを対象としたプライベート・マーケットプレイスを組み、ビューアブルなインプレッションのみを購入するという取り組みをキャンペーンの一環として実施されました。感触はいかがでしたか?
小池:やはりまず、ビューアビリティがよかったですね。レポートの数字を見て、「こんなに安心して買える広告商品があるのか。いいね」と話したことを覚えています。
青木:媒体側にもIAS のソリューションが入っており、日本マイクロソフトの求めるビューアビリティの基準値をクリアするところだけに配信するという商品でしたので、最適化がかかる前から業界水準をはるかに上回るレベルの結果が出ていました。アドフラウドも極めて低い数値でした。
— 今後も同様のキャンペーンを実施する際には、ビューアブルインプレッションに限定した買い付けを積極的に取り入れていくことになりますか?
小池:はい、そう考えています。Surface のキャンペーンは四半期ごとにターゲットを定めて実施しており、たとえば高収入で出張が多く、外でよく仕事する人だとか、さまざまなデータを使いながら四半期ごとにプロファイルを作っています。
横田:カラ のクライアントの中でも、日本マイクロソフトはプログラマティックに対してもっとも取り組みが進んでいるお客さまです。
ーーそのお客さまが「こんなに安心して買えるのか」と感心されたのはやはりすごいことですね。
横田:そうですね。ご存じのように、プログラマティックというとブランドセーフティやアドフラウドの問題がついて回るので、IAS なしではキャンペーンは回せないですね。
グローバル企業のマーケティングのスタンダードを日本に広める
— 小池さんは、広告配信のクオリティを上げるためのアドベリフィケーションの重要性を、エヴァンジェリストのようなかたちで社内に向けて発信していると聞きました。
小池:僕自身がこの2年間、グローバルの方針に沿って取り組みを進める中で、安全な広告掲載面にきちんと見られるかたちで広告が掲載されることの重要性を確信するようになりました。
商品認知を広めるためにインプレッションの数値を重視するのも間違いではありませんが、おかしなところに広告が表示されているのでは意味がない、正しい広告を出すことを指標にするべきで、そのための動きをカラと一緒にがんばっているんだよ、と説明しています。
— グローバル企業のマーケティングのスタンダードを、日本にも持ち込んで広めていこうという動きですね。
小池:そうですね。変化の早いインターネット広告のさまざまな知識についていくことは誰にとってもたいへんですが、グローバルの動きを日本にも共有してさらにレベルを上げていきたいと考えています。
その意味では、IAS が発行する「メディアクオリティレポート」もたいへん役に立っています。昨年10月のイベントでいただいた冊子を読んで自分でも勉強しましたし、「これを見ればすぐ分かるから」と他の人に貸したりもしています。これを30分読んでもらうと「グローバルアドチームはこういうのをやっているのか」というのが分かってもらえます。
— ありがとうございます。このように理解していただき社内に広めてくださる方がいらっしゃることを、とても心強く感じます。
「タイムインビュー」には関係者を巻き込めるポジティブさがある
— カラにおたずねします。エージェンシーの立場でIAS に期待することはありますか。
横田:これまではアドベリフィケーションが日本に浸透する初期の段階として、ブランドセーフティやアドフラウドがどういう状況にあるかというモニタリングから入り、次はそれをどう防ぎ、どうネガティブな部分をなくすか、というところを一緒に取り組んできました。ネガティブなところをなくす取り組みはある程度できてきた段階なので、今後期待することとしては、ポジティブなものをどう生み出すかですね。
— なるほど。
横田:ビューアビリティ保証の取り組みですとか、やはりIAS のテクノロジーを使っていかにクオリティーの高いインベントリに配信してお客さんに成果をもたらし、最終的にはお客さんのゴール達成に貢献する好循環を生んでいくところですよね。もちろん基盤としてそういうネガティブなところを防ぐためのテクノロジーは重要ですが、その先の、クオリティーの高い広告を実現していただきたいと思います。
その意味では、昨年10月にIAS から発表された、広告にどれだけ接触したかという「タイムインビュー」(*)の指標に注目したいと考えています。
*タイムインビュー:業界基準を満たさないインプレッションを除いた、ビューアブルなインプレッションにおける閲覧時間の平均
小池:僕もタイムインビューの考え方は面白いと思っています。今、社内にビューアビリティを高めることの重要性を説明していますが、ビューアビリティさえ高ければいいのか、それをKPIにされては困るよと、たまに言われることがあります。
それに対して、1人に対して何分間見せられたのかというタイムインビューのような指標が次の目標になるといいかな、と。そのほうが説明しやすいです。今は、ネガティブを消すためにIAS(のソリューション)を導入しているという説明ですよね。いかに安全であるかだけを追求するより、安全であることを前提として、それが何分間見られたか、何秒見られたかのほうがもっと関係者を巻き込めます。
横田:やはりそういったデータをたくさん持っているIAS から、クライアントも含めた日本の広告業界に向けて、啓発していく動きを積極的にしていただけるとありがたいなと期待しています。
私たちから提案する際のクライアント(日本マイクロソフト)からのフィードバックとして、何か新しい試み、ファースト・イン・ザ・マーケットの提案はないのかと必ず言われます。そういうものに対して非常に積極的に取り組んでいただけるクライアントですので、われわれもある程度ベータ的なものでも提案することもありますし、日本に入ってきていないテクノロジーでも直接本国にコンタクトして使っていただいたりもしています。
小池:新しいこと、より安全なことを提案してくれるのは僕も楽しみにしています。提案を受けてあわてて勉強することも多いのですが、日本にいながらインターネット広告の最新の動向に触れ、Microsoft 本社が考えているであろうことを感じとることができています。
— 理想的なクライアントとエージェンシーの関係ですね。ありがとうございました。