前回の記事では、業界関係者を対象に実施したアンケート調査結果をまとめた「Industry Pulse 2020」から、アジア太平洋地域(APAC)の結果を、3つのキーワードとともにご紹介しました。
おさらい「2020年インターネット広告の最新トレンドを読み解く3つのキーワード」
1.コネクテッドTVとOTT
2.コンテキスト・ターゲティング
3.メディア品質詳しくはこちらの解説記事で!
今回は記事では、APAC版レポートから日本の結果のみを抜粋し、日本のデジタル広告業界が直面する課題を見ていきましょう。
最も大きな課題は「デジタル広告の正確な計測」
下のグラフは「今後12か月以内に直面すると予測されるデジタルメディアの課題」について、日本の回答のみを抜粋して集計したものです。トップは「デジタル広告の正確な計測」でした。
関連して寄せられたコメントを見てみると、「正確な計測」と言っても、何を計測したいのかについては様々な意見があることが分かります。
- ブランディングや広報活動といったダイレクトに購買に結び付きづらい活動の効果測定
- Cookie制限の動きに対し、今後どのようなデータを活用すべきか
- メディア横断で一貫したデータの計測
などが挙げられる一方、「何をキャンペーンの成功指標とすべきか」「デジタル広告の効果測定指標としてどんなKPIが有用か」「取得したデータをどう活用すべきか」といった根本的な意見も散見されました。デジタル広告予算の比率が高まり、積極的な投資がなされる一方で、デジタル投資の有効性を正しく評価する指標を多くのデジタル広告関係者が模索している姿が浮かび上がります。デジタル広告を正しく評価するために不可欠な透明性の高いデータについても関心が高まっており、2020年に「メディア延滞の品質を改善するために、デジタル広告の検証ソリューション(アドベリフィケーション)がより重要になる」と回答した割合は88%にのぼりました。
日本は安全だから大丈夫?世界と比較してアドフラウドへの意識が低い日本のデジタル広告関係者
データの正確さに対する課題意識が非常に高い一方、データの正確性を損なう大きな要因であるアドフラウドへの関心が、世界各国の調査結果と比較して低い点が気になります。
世界的なアドフラウドの発生率はデスクトップWebで11.7%と、全体の一割を超えています。Industry Pulseではこの世界平均に対し、自社のデジタルキャンペーンのアドフラウド率が上回っていると思うか、下回っていると思うかを聞きました。結果が以下の図です。
西ヨーロッパやアメリカでは半数以上が自社のキャンペーンのフラウドに対して高い危機意識を持っており、APAC全体でも約半数が世界平均と同等もしくはそれ以上のアドフラウド率があると考えています。これに対し、日本では42%が世界平均を下回っていると考えています。
では実際、日本はアドフラウドに対して世界の他の国よりも安全なのでしょうか?
これは、2019年上半期のメディアクオリティレポートに掲載された、アドフラウド対策を実施したキャンペーンにおける各国のアドフラウド率です。日本は2.6%と対象国の中で最もアドフラウド率が高く、さらに前年同期との比較で最も悪化しています。
アドベリフィケーションの3指標*のうち、日本では特にブランドセーフティへの関心が高く、対策をする場合もブランドリスク対策が中心となることが多いのですが、ブランドセーフティに偏った取り組みは、アドフラウドとビューアビリティを悪化させる可能性があります。実際、2019年上半期はブランドリスクが半減した一方で、アドフラウドは対象国中ワーストワン、世界で唯一ビューアビリティが悪化するという結果を招いてしまいました。(参考記事「2019年上半期MQRに見る「アドベリ3指標にまんべんなく目配りが必要な理由」)
*アドベリフィケーションの3指標:ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティの3つの基礎指標
デジタルキャンペーンを評価するにしても、PDCAサイクルを回して改善していくにしても、「何を評価するのか」を明確にし「評価のために有効なKPI」を設定することが大前提です。データが取得しやすいデジタルだからこそ、業界関係者は大量に取得できるデータのうちどのデータを見るべきか、またどうやってデータの正確性を上げていくのかを模索しています。広告主と代理店、パブリッシャーでも見解が異なるでしょうし、時にはデジタルマーケティング部門と宣伝部とで異なる見方をするケースもあるでしょう。
データの透明性と正確性を担保する一つの方法は、媒体やプラットフォームから取得できるデータに加え、信頼できる第三者のデータを活用することです。IASは広告主、代理店、パブリッシャー、アドテク向けにそれぞれ最適なアドベリフィケーション・ソリューションを提供しています。詳しくはぜひ当社Webサイトをご覧ください。