IASでは毎年、業界関係者へのアンケート調査から、新しい1年のインターネット広告業界が直面する課題とトレンドを占うレポート「Industry Pulse」を発表してきました。2020年は日本を含むアジア太平洋(APAC)版を初めて発表しましたが、今年は日本だけを対象とした日本版を公開します。
今回の「The 2021 Industry Pulse Report 日本版」は、日本のインターネット広告関係者175名に参加いただいたアンケート調査の回答がもとになっています。レポートから、2021年に業界のプロフェッショナルがどのような課題に直面し、どこにチャンスを見出しているのか、5つのポイントをご紹介します。調査結果の詳細はレポートをダウンロードして、ぜひご自身でご確認ください!
1. 2021年の業界課題トップはサードパーティクッキーの非推奨化、 データプライバシー、そしてコンテキストターゲティングへの対応
多くの業界関係者は、これまでにデータプライバシー規制の強化への対応としてコンプライアンスを確保するための対策を進めてきました。2021年のデジタル広告業界にとって、サードパーティクッキーの非推奨化は依然として最重要課題であり、61%が2021年の最重要課題だと回答しました。昨年、業界の焦点は法制化に向けられていましたが、2021年はここうした変化がもたらす影響を正確に測定することが重要視されています。データプライバシー規制の強化は、日本の業界関係者の半数近く(44%)が重要課題と認識しており、サードパーティクッキーによるトラッキングに代わるものとしてコンテキストターゲティングへの関心も高まっています。
2. 進むモバイル技術のイノベーションに寄せられる期待
eMarketerによると、2021年のモバイル広告費は122億4000万ドルに達し、日本のデジタル広告費全体の73.4%を占めると予測しています[1]。モバイルは何年も前から広く採用されているデバイスですが、本調査の回答者の66%は、新しいテクノロジーとモバイル動画消費の増加の組み合わせが、モバイルの価値をより確固たるものにするだろうと予測しています。回答者の76%は、モバイル環境におけるコンテキスト広告技術の進化が2021年にイノベーションを加速させると考えており、64%は5Gの採用が拡大していることがイノベーションの原動力になると指摘しています。
3. OTT動画配信サービスとコネクテッドTVの躍進は、従来型テレビに食い込むか
OTT動画配信サービスやコネクテッドTVの普及率、加入率ともに大幅な伸びを示しており、プラットフォームの選択肢も増えているにもかかわらず、広告予算を従来型TVコマーシャルからOTT、CTVへシフトする動きはまだゆっくりとしています。2019年のデジタル動画広告市場は前年比157.1%の3,184億円と大きく伸長し、全体の19.1%を占め[2]、今後もさらなる成長が見込まれています。本調査対象者の77%が、消費者のステイホームが続く中で、従来型TVからOTT、CTVへの移行が加速すると考えています。また、74%が、デジタル動画、OTT、そしてCTVの広告費とメディア消費の両方が関連技術のイノベーションによって増加するだろうと予測しています。
4. ソーシャルメディアに求められるのは、さらなる透明性の向上
ソーシャルメディア広告は、今後も引き続きデジタル戦略において貴重な役割を果たすことになりそうです。ソーシャルメディア広告に投資される金額は年々増加しており、2021年には5,985億円に達すると予測されています[3]。調査回答者の52%がソーシャルメディアを最優先のメディアとしているのもうなずけます。一方で、77%が、メディアの品質指標の透明性が不十分であることが、2021年のソーシャルメディアへの支出に影響を与えると回答しました。また、メディア品質の透明性が不十分なためにメディア支出が調整される可能性が高いプラットフォームとして、YouTube(37%)とFacebook(34%)が挙げられました。どちらのプラットフォームも他に類を見ないオーディエンスへのリーチとエンゲージメントを提供しており、広告戦略に欠かせないプラットフォームになっており、広告主はジレンマに陥っています。回答者の6割以上(66%)が、ソーシャルプラットフォームでのアドフラウドが2021年の懸念事項である、とも予測しています。
5. プログラマティック広告の躍進なるか、強まるメディア品質へのこだわり
プログラマティック広告は引き続き成長を続け、今後一年でかつてない成長を遂げる可能性があると予測されます。しかし、業界関係者は成長著しいプログラマティック広告に対してリスクが高いと感じており、広告検証の必要性を感じています。調査回答者の30%が、2021年にはプログラマティックの透明性とサプライパスの最適化が重要な課題になると回答。IASは、新しいテクノロジーの出現と業界のパートナーシップの強化により、2021年はプログラマティックの透明性がさらに向上すると予想しています。
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