IAS は、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(JAA)Web広告研究会内に設立された「ネット広告健全化プロジェクト」の発足を記念して開催された特別セミナー「アドベリフィケーション、ビフォーアフター」に登壇し、日本のデジタル広告の健全化のための具体的な取り組みを紹介しました。
300人以上が参加したオンラインセミナーの様子や、アドベリを導入したロート製薬の成功事例をまとめましたので、見逃してしまった方も、参加したけれどもう一度内容を確認したいという方も、ぜひご覧ください!
セミナー概要:
ネット広告の透明性向上を実現するアドベリの解説と、「ロート製薬」の成功事例を紹介
「ネット広告健全化プロジェクト」は、日本のデジタル広告の健全化を目的とした業界初のアドベリ啓発のための取り組みとして発足しました。本セミナーはその第一歩として、アドベリフィケーションの概要は理解しているが、自社で取り組まないといけないのか?取り組むことでどんなメリットがあるのか?売り上げに貢献できるのか?など、導入するにあたって知っておくべき内容をお伝えする目的で開催されました。
- 開催日:2020年7月6日
- 会場:ウェビナー開催(Zoom、Facebook Live)
- 登壇者紹介:
- 伊藤 剛氏(ロート製薬株式会社 メディア&プロモーション部メディア管理グループ)
- 小林 秀次氏(株式会社日本経済新聞社/Web広告研究会 ネット広告健全化推進プロジェクトリーダー)
- 山口 武(Integral Ad Science Japan エバンジェリスト/シニアアカウントエグゼクティブ)
「アドベリフィケーション」とは
「アドベリフィケーション」とは、「広告主が意図していない不適切なサイトに広告表示されていないか」(ブランドセーフティー)、「広告がbotなどによる不正なインプレッションやクリックが発生していないか」(アドフラウド)、「広告がしっかり人の目に触れているか」(ビューアビリティー)といった「広告掲載先の内容の品質確認」のことを指します。アドベリフィケーションでは、これら主要3指標をベンチマークしていきます。
日本におけるデジタル広告の現状
日本は1位のアメリカに次ぎ、2番目に広告出稿費用の多い国でありながら、アドフラウド対策が欧米先進国ほど徹底されていないことから、世界中の不正業者から狙われやすくなっています。
2019年上半期の日本のブランド棄損リスクは2.9%、アドフラウド率は2.6%、ビューアビリティは42.3%でした。ブランド毀損リスクはブロックリストの活用が進んだこともあり、前年同期と比較すると数値は下がっています。
しかし、ブランド毀損リスクだけに偏った対策がされたためにアドフラウドとビューアビリティは悪化しました。調査対象の10か国中、アドフラウドとビューアビリティが悪化したのは日本のみだったほか、アドフラウドに限ると、日本は最下位でした。(IAS実施、アドベリフィケーションの主要指標の国別ベンチマーク「メディアクオリティレポート」より)
アドベリフィケーション成功事例:ロート製薬
今回のプロジェクト発足にあたり、ロート製薬社に協力してもらい、アドベリフィケーションを導入することによる効果検証を2020年2月から3月にかけて実施したところ、次のような成果が確認できました。短期間であっても、アドベリフィケーションによる広告最適化の効果が見込めることが分かります。
- ブランド毀損リスクは2%から1.0%に減少、ビューアビリティは41.5%から50.3%へと改善しました。アドフラウドは4.7%から6.0%、そして5.5%と一時的な上昇を見せたものの、3月前半から後半にかけては減少傾向が見られ、このまま継続すれば開始時よりも低い水準に改善できる目途が立ちました。
- コンバージョンに最も貢献する蓄積閲覧時間と配信回数を特定し、ターゲティングを行うことで、適切な閲覧の割合を9%から36.6%へ増やすことに成功しました。
アドベリフィケーション導入にあたってのポイント:
「導入目的」と「ゴール」の明確化
ロート製薬がアドベリフィケーションを導入するにあたり、最大のハードルだったのが、「どうやって社内を説得するのか」と、「何をゴールに設定するのか」の二点でした。
ロート製薬では、以前からテレビCMでも視聴率や視聴者データなどを詳細に分析し、広告が意図したターゲットに届いているかを厳しく管理してきた実績がありました。このため、デジタルでも同じように計測をしっかりやるべきだという合意は早い段階で取れたといいます。しかし、「計測できる」というだけではアドベリフィケーションの導入に踏み切るに至りませんでした。そこで、導入によるコスト的なインパクトを明示することで導入目的を明確化し、社内を説得しました。加えて上司やチームメンバーに積極的に関連セミナーや勉強会に参加してもらい、アドベリフィケーションに対する理解を深めてもらいました。
アドベリフィケーション対策を実施するにあたってのゴールは、①現状把握と、②対策によって指標がどのように改善するのかをベンチマークすること、の2点に設定しました。①では現状把握のために約1か月間、アドベリ3指標の計測を実施しました。そして、②では、3~7日といった短いスパンで様々な対策を実施し、アドベリ指標の推移を日別で追い、施策によってどの数値がどのように変化するかを詳細に分析しました。現状把握と、対策による指標変化のベンチマークを実施することで、次のステップに向けて設定すべきゴールも明らかになってきました。
アドベリフィケーション対策を進めるうえでのポイント
通常、アドベリを導入する際には
1)健康診断の実施
2)最適化運用
3)ROI改善
という3つのステップをお勧めしています。
1で現状を把握し、改善プランとKPIを設定します。2では対策を実施しながらKPIに基づいてメディアごとにPDCAを展開し、メディアプランの見直しを行います。そして3ではさらにユーザーの閲覧時間などを基にしたROIの最大化を図っていきます。ステップを踏んで導入を進めることは、チーム内で目的意識を共有し、運用の経験値を積むことで工数の肥大を防ぎながら、目的を達成することができます。
また、ロート製薬の例でも見たように、アドベリ対策には複合的な対策が必要で、かつ、広告主と代理店、そして時にはメディアも一つのチームとなって連携して取り組んでいくことが非常に重要です。運用している担当者の理解度を上げること、ゴールイメージを全員で共有するためにコミュニケーションを密にすることも、成果を左右するポイントです。
さらに、アドベリフィケーションでは複合的に対策を打つことも重要です。新型コロナウイルスの流行により、みんなマスクをするようになりました。しかし、マスクをしているだけでは感染は防げません。手洗いやうがい、三密を避けるなど、様々な対策が総合的に効果を発揮するように、アドベリフィケーションについても様々な指標やソリューションを組み合わせて包括的に取り組んでいくことで結果が出る、ということを理解して進めることが重要です。
IAS は、ネット広告健全化プロジェクト発足メンバーの一員として、これからもデジタル広告の健全化に向けてアドベリフィケーションなどの関連ソリューションの提供や、ネット広告の透明性に関連した様々な情報を発信してまいります。
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