デジタルマーケティングを生業にする人にとって、2018年は変化の年でした。目まぐるしく現れては消える様々なニュースによってブランドセーフティがメディアの注目を高め、モバイルマーケターにとってはプログラマティックが欠くことのできない存在となりました。そして業界全体が、デジタル広告のサプライチェーンに対する透明性を高めることに対する関心を大きく高めた一年でもありました。これらは大きな変化ですが、予想外のことではありませんでした。IASの専門家は2017年時点でこれらの出来事の多くを予想し、来たるべき問題に対応できるソリューションを開発してきました。
では、この次、2019年に私たちが注目していることはなんでしょう?業界が直面する大きなテーマ、チャンス、そして課題について、我々が注目しているトピックスをご紹介します。
2019年大予測
マーケターが取り組むべき2019年の大きな課題は、予算です。特に、予算をどこに、どのように予算を配分するかが重要です。インパクトを最大化し、ROIを高め、ブランド認知を高めるためにいくら、どこにマーケティング予算を投下するか、マーケターは熟知している必要があります。もちろんこれは目新しいことではありませんが、予算の意思決定者がこれまで以上に成果に焦点を合わせることは間違いありません。透明性が高まれば、結果を重視した予算の使い方がさらに期待されるでしょうし、結果を出すことに対するマーケターへのプレッシャーが一層高まると予想されます。不正んプレッションや、ビューアブルでない=見られないインプレッション、不適切なコンテキストに広告が表示されるような事態を避けることはより重要な意味を持つことになります。
ビューアビリティはより厳格化
媒体を購入する側が、自分たちのニーズにマッチするようにカスタマイズしたビューアビリティの指標を求める動きは、2019年さらに加速すると予測します。特にEMEAではその傾向が高まるでしょう。しかし、カスタム・ビューアビリティを定義する動きが広まることは、同時に全ての当事者にとって頭痛の種となる可能性があります。つまり、それぞれ独自に定義されたカスタム・ビューアビリティをそのほかの指標と統合して評価し、正確で効率的に活用することが求められるようになるのです。
プログラマティックのアドベリが対策進む
広告運用のインハウス化の動きは、特にプログラマティックにおおいてより加速するでしょう。プログラマティックは2018年には成熟期を迎え、パブリッシャーはこれまで以上にプレミアム在庫をプログラマティックチャンネルに割いてきました。また、マーケターも、キャンペーンのスケールを重視して純広告からプログラマティックへと、広告予算の配分を大きくシフトしました。今年、特に広告主となる企業のマーケターに求められるのは、プログラマティックな広告取引を外部に丸投げするのではなく、自ら管理運用することです。インハウス化は、自分たちが保持するデータを適切に管理し、メディアバイイングのROIへの貢献度を高めるためには不可欠です。
Open Measurement SDK (OMSDK) 採用が進むのに呼応して、プログラマティック・バイイングの対象をアプリ内広告に拡大する動きも広がっています。DSPにとっては、Web広告と同等の計測や透明性の確保、ターゲティング機能をアプリ内広告でも可能にすることが課題となってきます。
モバイルの透明性向上
2019年はモバイル広告の透明性を高める好機となるかもしれません。真に意味のある透明性の確保に向け、2018年に主要なアプリベンダーの間で広まったOMSDK採用の動きと同じような広範囲なムーブメントが期待されます。Open Measurement イニシアチブの影響がWeb上の動画のVAST(Video Ad Serving Template / Interactive Advertising Bureau (IAB) によって策定された、アドサーバーと動画プレイヤーとを接続させるための規格)規格に対応した計測をさらに推し進めることも予想されます。VAST 4.1では、Open MeasurementのWeb向けの規格が仕様に組み込まれ、Web上のVAST対応の動画広告在庫にも適用されます。
アドフラウド(広告詐欺)に必須となるAIと機械学習
2019年は広告詐欺の手法も、これに対抗するテクノロジーもより洗練されていきます。広告詐欺との戦いは常に軍拡競争の様相を呈してきましたが、これから踏み入れる新しいフェーズでは自動化が焦点となります。この新しい戦いのフェーズにおいて不可欠なのが、AIと機械学習です。マーケターが広告の規模を追求すれば、詐欺師もこれに追随します。マーケターが求める規模で不正対策を実施するには、決定論的なルールに基づいた方法と複雑な機械学習を組み合わせる必要があります。
モバイルのアドフラウド対策強化
2018年に多くのマーケターを悩ませたモバイルアプリ内広告の不正は、残念ながら2019年も引き続き悩みのタネとなりそうです。アプリストア運営者にモバイルアプリの審査を全て任せるのではなく、モバイルアプリにまつわる不正に対して業界が当事者意識を持って対応するべきです。アプリストア運営者に、アプリに仕組まれた詐欺や不正を全て検知しろというのも無理な話なのです。病気にかかってから治療するよりも、かかる前に予防する方がよっぽど効率的です。広告主は、入札前のリスク対策を強化することで、ハイリスクなモバイルアプリがアプリストアから排除されるように働きかけるべきです。
OTTにも求められるアドフラウド対策
OTTの広告在庫の流通量が増えるに従い、残念ながらOTTを狙う不正業者の数も増えています。2019年は、OTT広告が実際にOTT端末に配信されているかどうかを計測するところからのスタートになるかもしれません。ベリフィケーションベンダーは、Web/モバイルに類似した不正パターンをOTTでも検知・ブロックし、OTT特有の不正にも対抗できる対策を打ち出すことが求められます。
パブリッシャーとのパートナーシップ
拡大を続けるパブリッシャー業界に対し、私たちも提供するソリューションを進化、拡大します。具体的には、計測・最適化ソリューションをさらに多様化し、動画とモバイルアプリ内広告に対応させていくことに重点的に取り組んでいくことになるでしょう。また、EMEAやAPAC地域において、パブリッシャーとのパートナーシップを拡大していくことも重要だと考えています。
OTTに注目!
OTTへの注目度の高まりは歓迎すべきものですが、OTTが持つ複雑性を無視することはできません。2019年はプログラマティックTV飛躍の一年となるにはまだ時期尚早と見ています。プログラマティックなサプライチェーン上で、様々なフォーマットの動画広告を統合して流通させるには、まだ多くの課題が残っているからです。2019年は、インターネットに接続されたテレビが他のデジタルプラットフォームとどう違うのか、ビューアビリティやメディアバイイング戦略がどう違ってくるのかについて、多くの学びがある一年となるでしょう。現在、多くの広告主が、キャンペーン最適化を実現するためにOTTの広告在庫の計測を求めています。2019年はさらに一歩踏み込んで、オーディエンスターゲティングや広告露出に関するより詳細なデータが、OTT広告に関しても求められるようになるでしょう。この動きはパブリッシャーにとっても恩恵をもたらします。OTT広告をオーディエンスターゲティングや広告露出のデータとあわせて評価し、正確なデータを提供できることは、媒体価値を高めることにもつながります。
※この記事は英語版Insiderに掲載の「2019 Predictions from IAS」をもとに、IAS Insider Japan編集チームが翻訳、編集しました。