IAS が半年に一度発表しているメディア品質指標のグローバルレポート『メディアクオリティ レポート 2020年下半期版』を公開しました。
レポートでは、日本のデジタルメディアのパフォーマンスと品質を示すアドフラウド、ブランドセーフティ、ビューアビリティの各指標を、端末(デスクトップ/モバイル/CTV)、環境(ウェブブラウザ/アプリ)、広告フォーマット(ディスプレイ/動画)別に、世界20カ国のデータとともにご確認いただけます。
残念なことに、今回のレポートで日本のメディア品質は世界最低レベルを記録しました。
もくじ
▶ ポイント1.日本のアドフラウドは世界最低レベル
▶ ポイント2.日本はブランドリスクでも最も高い増加率を記録
▶ ポイント3.ビューアビリティも前年に引き続き世界最低レベル
▶ アドベリ対策が遅れる日本は世界から狙われている!
▶ 《参考》これまでのメディアクオリティ レポート
▶ 《参考》IASの調査レポート
1.アドフラウド:世界的なアドフラウドの低下傾向にも関わらず、日本のアドフラウド率は増加し世界最低レベルに
2020年下半期、世界のアドフラウド率は全体的に改善し、アドフラウド対策を実施したインプレッションでは計測対象のすべての端末、環境と広告フォーマットでアドフラウド率が低下しました。この結果、すべてのフォーマットでのアドフラウドの平均率は1.0%以下となり、日本版レポートの公開を開始した2018年以降で最も低い水準でした。
国別のデータでは、日本とオーストラリアだけがアドフラウド率の上昇を示しました。日本では特にデスクトップとモバイル端末のウェブ(ブラウザ)環境で、ディスプレイ広告の対策済みインプレッションのアドフラウドが増加しました。日本のデスクトップ ディスプレイでのアドフラウド率は前年同期の2.6%からさらに悪化し2.9%となり、世界ワースト1を記録しました。同期間にグローバル平均では0.3ポイントの改善が見られたのと対照的です。さらにモバイルウェブ ディスプレイでも2.7%(前年同期1.9%から0.8ポイント上昇)と世界で最も高いアドフラウド率でした。グローバル平均は0.7%(2019年下半期)から0.4%(2020年下半期)と改善しており、アドフラウド対策が世界的に進む中で日本が取り残され、標的とされていることがうかがえます。
2.ブランドセーフティ:世界の中でもブランドリスクの上昇が目立った日本。デスクトップ ディスプレイとモバイルウェブ ディスプレイでは日本が最も高い増加率を記録
日本はモバイルウェブ ディスプレイのブランドリスクが2019年下半期の7.6%から2.8ポイントも上昇し、2020年下半期は10.4%と、世界で最も高いブランドリスクの増加を記録しました。2020年下半期のグローバル平均値は5.8%で、前年同期比でわずか0.1ポイント上昇しただけでした。日本はデスクトップ ディスプレイでも2019年下半期の3.2%から2020年下半期は5.6%と大幅な上昇を示し、これはイギリスに次いで2番目に高いリスク値でした。同環境のグローバル平均は4.4%でした。
2020年に発生した予測不可能な世界的パンデミックがデジタルエコシステムに与えた影響の一つが、動画広告におけるブランドリスクの世界的な上昇です。この傾向には、下半期を通して見られた動画インプレッション全体の増加と相関が見られました。つまり、パンデミックによって自宅で過ごす時間が増えたことで動画の視聴時間が伸びたことと、動画広告におけるブランドリスクの増加の間には相関関係が見られたのです。ブランドリスク増加の最大の要因はアダルトコンテンツで、ヘイトスピーチがこれに続きました。
3.ビューアビリティとタイムインビュー:日本は前年同期に引き続き世界最低レベル
日本の2020年下半期のビューアビリティは55.7%(デスクトップ ディスプレイにおいて)で、グローバル平均の68.8%を大きく下回りました。2019年下半期に日本数値の公開を開始して以来、初めて5割を超えたものの、2半期連続で下落しています。ビューアビリティが7割を超える国も多い中、日本の55.7%は圧倒的に低い水準にあります。
モバイルウェブ ディスプレイでは日本の数値は43.5%(2019年下半期)から46.4%(2020年下半期)へと改善が見られましたが、グローバル平均の62.9%と比較すると大幅に低い水準にとどまっています。50%を下回ったのは日本のみで、デスクトップ、モバイルともに日本のビューアビリティの低さが際立つ結果となりました。
日本のデスクトップ ディスプレイのタイムインビューは23.53秒で、前年同期の21.95秒から若干伸びました。モバイルウェブ ディスプレイは2019年下半期の16.6秒から14.72秒と、逆に短くなっています。デスクトップでもモバイルでウェブでも、日本のタイムインビューはグローバルの平均値とほぼ同程度です。
アドベリ対策が遅れる日本は世界から狙われている!
ここまで見てきたように、日本はどのメディア品質指標も世界と比較して低い水準にあります。各指標とも2018年下半期に一度改善の兆しが見えたものの、その後ふたたび悪化。同期間に世界各国がアドベリ対策を推し進めてメディア品質を改善させたのに対し、日本はアドフラウド、ブランドリスクともに明らかな悪化傾向が続いています。
時系列での推移、グローバルとの比較については別途詳しく解説する予定です。
日本は世界で最も広告投資額の大きい国の一つです。にもかかわらずアドベリフィケーション対策の導入はアメリカやヨーロッパ諸国と比較すると圧倒的に低い水準にとどまっています。これは、特にアドフラウドによって金儲けをしようとする不正業者にとって「狙ってください」と言っているようなものです。
ぜひMQRをダウンロードして、まずは日本の現状をご自身の目でご確認ください。
《これまでのメディアクオリティ レポート》
《IASの調査レポート》
- 『The Power of Context in APAC:コンテキストが広告受容性に与える影響』(2021年3月4日)
- 『Industry Pulse 2020 日本版』(2021年業界トレンド予測)(2021年1月19日)
- 『新型コロナウイルスがデジタル広告配信環境に与える影響』(2020年5月21日)
- 『The Ripple Effect : 波紋効果~コンテンツの品質が消費者の広告認知に与える影響に関する調査レポート』(2019年11月13日)
- 『脳科学から見るブランド認知~広告閲覧環境にけるハロー効果とブランド好感度への影響に関する調査レポート』(2019年7月26日)